偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


私は、改めて自分の顔を観察した。

少しだけつり上がった目の形。高すぎない鼻。小さめの唇。

……私って、こういう顔をしていたんだ。

コンプレックスだと思っていたところが、今日は「私だけの形」に見えた。

一筆一筆、ていねいに色を重ねていく。最後に、唇に桜の花びらのような、淡いピンク色をのせた。

鏡の中にいるのは、見慣れた、でも昨日までの自分よりずっと自信に満ちた顔をした私だった。

「よし。行ってくるね」

鏡の中の自分に向かって、小さく頷いた。



舞台袖で、私は出番を待っていた。

この日は保護者や地域の人も見に来られる一般公開日で、外からはお客さんの話し声や椅子を引くガタガタという音が聞こえてくる。

舞台袖は、外の明るさがうそみたいに暗くて、古いカーテンのにおいが立ちこめていた。

舞台の端には、大きなカボチャの馬車が置かれている。夏休み返上で、みんなで一緒に木の板を切り出し、金色のペンキを塗った手作りの馬車。

それを見ていたら、急に足がガクガクと震えだした。心臓の音が、耳のすぐ横で鳴っているみたいにうるさい。

いま着ているのは、ボロボロの布をつなぎ合わせた「灰かぶり」の衣装。

ゴワゴワとした手ざわりが、今の自分の情けなさと重なるみたいで、喉のあたりがキュッとなった。

「陽葵、大丈夫?」

隣に、咲季がやって来た。