いじわるな義姉役の子には、目尻を少し跳ね上げたラインで強気な顔を。
妖精役の子には、朝のつゆみたいにキラキラしたラメで不思議な雰囲気を足していく。
メイクを終えた咲季が鏡を覗き込んで、「似合う?」とウインクした。
「完璧」と親指を立てて返すと、咲季はにっと笑った。
メイクが終わるたびに、みんなの表情が「中学生」から「物語の登場人物」に変わっていく。
服を着替えるだけじゃ、完成しない。最後にメイクの魔法がかかって、はじめて物語が動き出すんだ。
最後に、芽依ちゃんが鏡の前に座った。彼女の指先は、小刻みに震えている。
「緊張してる?」
「はい。めちゃくちゃ」
「芽依ちゃんなら、大丈夫。練習の成果を信じて」
私はブラシを手に取った。
「ここにパールのアイシャドウを乗せると、瞳がキラッとして、目が大きく見えるんだよ。足しすぎないで自然に活かすのがコツ。ブラシはこの角度で」
芽依ちゃんが、おそるおそる細いブラシを受け取った。
「……こうですか?」
「そう、鉛筆を持つみたいに。力を抜いて、なでるように」
芽依ちゃんの筆先が、そっとまぶたをなでる。ぎこちないけれど、とても丁寧だ。
「……なんか、すごく集中できます。ドキドキしてたのが、どこかへ行っちゃったみたい」
「そうでしょ。メイクって、その瞬間のことだけしか考えられなくなるから」
頬に赤みを足して、唇にほんのりと色を乗せる。仕上げのハイライトは、芽依ちゃんが自分でそっと乗せた。



