夕食後。部屋に戻った私は、台本を開いた。
部室の棚から借りてきた予備の台本だ。
自分のメモは、景斗さんが持っていった台本に全部書いてある。だから白紙のページに書き直しながら、一つひとつ声に出して読んでいく。
ページをめくっていたら、書き直したばかりのメモが目に入った。
【魔法が解けたとき、一番勇気がいる】
シンデレラのために書いた言葉が、今は自分のことみたいに読める。
私も、ずっと何かに化けながら生きてきた。
景斗さんの前では、真白さんに。裏方では「目立たない自分」に。
誰かを変えることの裏に、本当の自分を隠して。
明日は、ただの結城陽葵で舞台に立つんだ。
景斗さんには会えるか分からないけれど、陽葵のまま舞台に立ちたい。
それが、今の私にできることだった。
窓の外で、風が木の葉を揺らす音がした。秋が、また少し深まっていた。



