「結城さんのことで、来たの。洸くんに放課後の時間を聞いて、会いに来たわ」
如月さんは迷いなく言った。
わざわざ、別の学校まで来るなんて……彼女の真剣さが伝わってきた。
俺は黙って、言葉の続きを待つ。
「あの子は、私のわがままを支えてくれた。私のせいで、あなたを騙すことになった。それは本当のことで、あの子はずっと自分を責めてる」
如月さんは、息を吸ってから続けた。
「あの子が西園寺くんといて楽しかったのは、事実よ。メイクは、偽物だったかもしれない。だけど、あの子の気持ちだけは本物だった。私が一番近くで見ていたから、わかる」
俺は何も言えなかった。
「あの子、明日の文化祭で、初めて舞台に立つの」
「舞台に?」
「ええ。ずっと誰かの背中を支えてきた子が、初めて自分自身として前に出るの。だから、見に来てあげて。あの子の本当の姿を」
しばらく、俺は黙っていた。秋の風が、二人の間を通り過ぎた。
「……わかりました。行きます」
如月さんは「ありがとう」と言って、くるりと向きを変えた。その背中は、迷いがなかった。
校門の前で、俺はしばらく立ったままでいた。
動画の中の声。台本のメモ。カフェで目を輝かせていたあの顔。全部が、一本の線でつながった気がした。
明日、その人に会いに行く。
【景斗side 終】



