偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「……あの子といた時間は、楽しかった。それは事実だ」

「じゃあ、それでいいじゃないか。あの子に、会いに行けよ」

「でも、俺は一度突き放した。今さら行ったら……恥ずかしいだろ」

「何が恥ずかしいんだ?」

洸が眉を上げた。

「お前は傷ついたけど、それ以上に後悔してる。それのどこが恥ずかしいんだよ」

俺は黙った。

「お前、昔っから不器用なんだよ。自分が何を感じてるか、ちゃんとわかってるくせに、それを認めるのに時間がかかる」

「……そうかもしれない」

「本当は、もう一度会いたいんだろ? だったら、素直になれよ」

洸は立ち上がって、俺の部屋の菓子を勝手に手に取った。

「明後日、星ヶ丘学園で文化祭があるんだろ。真白ちゃんから連絡があって、聞いたぞ」

「……知ってたのか」

「お前が落ち込んでるって言ったら、真白ちゃんが俺に連絡してきた。行く理由なら、あるんじゃないか?」

俺は、台本の最後のページをもう一度見た。

【本当の自分で、誰かと向き合いたい】

あの言葉が、また頭をよぎった。動画の中の声も、カフェで目を輝かせていたあの顔も、全部同じ一人の人間だ。

「……ああ」

俺は短く答えた。

洸は「やっと素直になったな」と笑った。文句を言う気にもなれなかった。



翌日の夕方。

「西園寺くん」

蒼門学院の校門を出たところで、俺は声をかけられた。

「あなたに、話があるんだけど」

振り向くと、本物の如月真白が立っていた。星ヶ丘学園の制服姿だ。

「……如月さん? どうして、ここに」