偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


部室に戻ると、重苦しい空気が漂っていた。

「どうしよう……主役がいないと、劇はできない……」

部長が、椅子に座ったまま頭を抱えている。

「代役、誰かできる人いない?」

「シンデレラのセリフ、めっちゃ多いし……今から覚えるのは無理だよ」

部室全体に、焦りと沈黙が交互に漂っていた。

私はメイク道具をケースにしまいながら、その空気の中にいた。

口を開きかけて、言えなかった。

ふいに、咲季が私を見た。

「ねえ、陽葵。やってみない?」

「え……私?」

「陽葵、いつもメイクのために台本読んでるし、セリフも覚えてるでしょ?」

部長が顔を上げた。

「そうだよ、陽葵ちゃん! あなたならできる!」

みんなの視線が、私に集まる。