偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「大丈夫だよ、芽依ちゃん」

笑って見せた。芽依ちゃんはしばらく私を見つめてから、ゆっくり近づいてきた。

「……無理してませんか?」

答えられなかった。「大丈夫」と言おうとして、言葉が出てこなかった。

芽依ちゃんは、そっと私の手の上に自分の手を重ねた。何も言わない。ただ、そこにいるだけ。

「先輩がいてくれたから、わたし、声が出るようになったんです。だから……今度はわたしが、そばにいます」

小さいけれど、しっかり届いた言葉だった。



その日の夕方。片付けをしていると、部室のドアが開いた。

「結城さん、ちょっといい?」

真白さんだった。手には、カフェのテイクアウトのカップが二つ。

「……これ、もしかして」

「ほうじ茶ラテ。あなたが好きだって、咲季ちゃんから聞いたの」

真白さんはにっと笑って、私の隣に腰を下ろした。

「結城さん、この間は本当にごめんなさい」

「気にしないで。私が引き受けたんだから」

笑ってみせようとしたが、真白さんは首を横に振った。

「……笑えてないわよ、結城さん」

私は黙りこんだ。

「やっぱり私、西園寺くんに話をしに行くわ」

「え……!?」