「陽葵、大丈夫? 最近、元気ないよ」
昼休み、咲季がお弁当箱を持って私の隣に来た。
「ちょっと疲れてるだけだよ」
「……本当に?」
咲季の目が、ずっと私から離れない。この子には、誤魔化せない。それはわかっていた。でも今は、まだ話せなかった。
「本当だよ。ありがとう」
私はお弁当を開いた。お母さんが朝早く作ってくれた、ふっくらとした卵焼きが、きれいに並んでいる。
だけど今日は、なんだか味がよくわからなかった。
◇
放課後。演劇部の部室に向かうと、すでに数人の部員が集まっていた。
来週の文化祭に向けて、衣装の最終確認や小道具の点検が続いている。
私はメイク道具のケースを開いて、中身を一つひとつ確認し始めた。
ブラシの毛先は傷んでいないか。ファンデーションの残量は足りているか。アイシャドウのパレットに、割れはないか。
手を動かしていれば、余計なことを考えなくていい。そのはずなのに。
今日は道具を並べても、いつもの落ち着きが来なかった。
「結城先輩……元気ないですね」
声がして振り向くと、芽依ちゃんが部室の入口に立っていた。



