偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


駅前のベンチに、私と真白さんは並んで座っていた。肌寒い風が、時折吹いていた。

「結城さん、本当にごめんなさい……」

真白さんが涙ぐんだ。

「真白さんのせいじゃないよ。元はと言えば、私が断れきれなかったんだから」

「だけど……」

「景斗さんは優しくて、時々寂しそうだったけれど。一緒にいると、楽しかった」

私は膝の上で手を組んだ。

「彼のこと、気づいたら好きになってた。だけど、私はずっと嘘をついていたから……嫌われて当然だよ」

真白さんが私の手を両手で包んだ。温かい。

「そんなことないわ。結城さんは、私のために頑張ってくれた」

真白さんは、少し間を置いてから続けた。

「私、ちゃんと責任を取る。結城さんのためにできることをするわ」

「……ありがとう、真白さん」

「任せて」

真白さんは私の手をぎゅっと握った。

完璧なお嬢様でも推し活全力少女でもなく、純粋な友達の顔だった。

暗くなった空の下、街灯がひとつ、またひとつと照らしている。

景斗さんが、私の台本を持っていった。あのメモを、今ごろ読んでいるかもしれない。

『裏方は、舞台を作る人間。でも、たまに自分も表に出てみたい』──あの言葉を、彼が目にしているかもしれない。

そう思うと恥ずかしくて、目の奥が痛かった。

それでも──もしかしたら、という気持ちがわずかに残っているのも、本当だった。