偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「……やっぱりね」

景斗さんが低く、抑えた声で告げた。

「え?」

「薄々、気づいてた。君は、如月さんじゃないって」

聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。

「待って、西園寺くん!」

真白さんが、私の前に出た。

「これには、事情があって。全部、私のせいなの。私が無理を言って、身代わりをお願いしたの。結城さんは、私のために──」

「それじゃあ、あなたが本物の如月さんなんですね」

景斗さんは真白さんを見て、確認するように言った。それから、改めて私を見る。

「君は、誰なの?」

今だ。自分で、言わなきゃ。

「私は……」

声が震えた。でも、逃げなかった。息を吸って、もう一度。

「私は、如月真白じゃ、ありません。結城陽葵です。真白さんのクラスメイトで……身代わりを、頼まれて。名前も身分も、嘘でした」

一度止まって、それから続けた。

「だけど、景斗さんと話して楽しかったことは本当です。さっきも、ちゃんと話そうと思っていました。怖くて、ずっと言えなかったけど」

景斗さんは黙ったまま、私を見つめた。

怒鳴りもせず、責め立てもしない。その静けさが、かえって鋭く刺さった。

「……俺、君のこと、信じかけていたんだ」

彼の瞳には、悲しみがあった。

「君といると、初めて本当の自分を出せた。だから、絵も見せた。全部本物だと思っていたから」

「景斗さん……」

「でも、ぜんぶ嘘だったんだね」