偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


景斗さんは迷わずピンクの綿菓子を二つ買って、一つを私に渡してくれた。

一口食べると、ふわっと溶けて甘さだけが残る。

「おいしい。やっぱり、甘いもの最高です!」

「ですね」

二人でベンチに並んで、綿菓子を食べた。

遠くでジェットコースターの歓声が聞こえ、子供が元気よく走り回っている。

しばらく黙ったまま食べていると、景斗さんがふと口を開いた。

「……実は、この銀髪、自分で決めた数少ないことの一つで」

さらりと触れるように言って、彼は自分の前髪をすっと触った。

「親が決めたレールの上を歩くことが多いから。せめてこれくらいは、って」

それ以上の説明はなかった。でも、その一言だけで、なんとなく分かった。

自由に選べることが、ほとんどない日常の中で、それだけを自分のものとして持ち続けているんだ。

「そうなんですね」

それしか言えなかったけれど、景斗さんは小さく頷いた。

そのとき、風が少し強く吹いた。

「あ」

ピンクの綿菓子がふわりとほどけて、一筋が私の前髪にかかった。

「……ちょっと待ってください」

景斗さんが、ごく自然な動作で手を伸ばした。指先が、そっと前髪をよけるように、綿菓子をつまむ。

「っ!」

数秒のことだったけど、息が止まりそうになった。

ひゃ、ひゃあ……! 景斗さんの指が、すぐそこに……!