「……もう。景斗さんったら、意地悪ですわ」
「俺はむしろ、掴んでほしいですけどね」
ふと、なんでもないように言う。それって、どういう意味だろう。
外に出ると、秋の柔らかな日差しが眩しかった。
涼しいはずの風が、火照った頬には少しも冷たく感じられない。
◇
次に私たちは、ジェットコースターに向かった。
乗り込んで安全バーを下ろしたとき、隣の景斗さんはまっすぐ前を向いていた。
緊張しているのか、していないのか、表情からは読み取れない。
コースターがゆっくり動き出す。登っていくにつれて、地面が遠ざかっていく。
頂上が近づくにつれ、全身が静まり返っていく気がした。
落ちる直前のあの感覚──静寂の中に、じりじりとした緊張だけが積み重なっていく。
そして、解き放たれた。
「──っ!」
風が顔を叩いて、全身が浮き上がるような感覚。叫ぼうとしても、声が風に消えた。
隣の景斗さんはやっぱり一声も上げなかったけれど、その横顔に、少しだけ血色が戻っていた。
「怖くなかったんですか?」
降りてから私が聞くと、彼は口元をゆるめた。
「好きなんですよ、こういうの」
それはいつもとは違う、年相応の少年みたいな表情だった。



