遊園地デート当日。秋晴れの気持ちいい朝だった。
私は鏡の前に座って、いつものように「真白」へのメイクを施していた。
カラーコンタクト、光と影で立体感を出すメイク、ハイライト。一つひとつ丁寧に。
だけど、今日はいつもより手が震えていた。
なんで、緊張してるんだろう。今までだって、景斗さんとは何度か会っているのに。
「陽葵、今日はお出かけ?」
ドアをノックして、お母さんが顔を出した。
「うん、友達と遊園地に行ってくる」
「そっか。……今日は、メイク気合入ってるね」
お母さんはそう言って、目を細めた。
「そうかな?」
私は笑って誤魔化した。本当のことは、言えない。
「行ってきます」とだけ答えて、私は部屋を出た。
バス停に向かう道で、自分が少し早足になっていることに気づいた。
急いでいる理由に、気づかないフリをしていた。
バス停に着く直前、スマホに真白さんからメッセージが届いた。
【今日のリリースイベントの会場、遊園地の最寄り駅と同じだったの! 終わったら合流しようかしら?】
いやいや! そんなことをしたらまずいでしょ、真白さん!
【合流は、しなくていいです】
即座に返信した。だけど、既読マークがついたまま、返事は来なかった。
なんとなく、嫌な予感がする。



