偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「すでにそこにあるものを、どう見せるか。俺が絵を描くときも、そういう感覚があって。何もないところに作るんじゃなくて、見えてないものを取り出す感じ」

その言葉が、しばらく頭から離れなかった。

まさか、景斗さんがこんなふうに話す人だとは、思っていなかった。

「……なんか、一緒ですね」

「ですね」

景斗さんは、口元をゆるめた。

その瞬間、何かがちかっと光った気がした。

こんなふうに、誰かと何かが重なる感覚。いつからか、私はそれを怖がっていた気がする。怖がっていたのに、今日は怖くなかった。

私は、ミルクティーのカップを両手で包む。顔が少し熱い。



帰り際。お店の外で別れようとしたとき、景斗さんが言った。

「今日は、ありがとうございました。楽しかったです」

「私も」

「……次は、遊園地に行きませんか?」

予想していなかった言葉に、心臓が大きく鳴った。

「如月さんと、もっといろんな話がしたくて」

遊園地──。

頭の中で、「終わりにするべきだ」という声がした。はっきりと、確かに聞こえた。

それでも、断る言葉が出てこなかった。

「……はい」

「良かった」

返事は短かったのに、その一言が、ひどく真剣に聞こえた。