「すでにそこにあるものを、どう見せるか。俺が絵を描くときも、そういう感覚があって。何もないところに作るんじゃなくて、見えてないものを取り出す感じ」
その言葉が、しばらく頭から離れなかった。
まさか、景斗さんがこんなふうに話す人だとは、思っていなかった。
「……なんか、一緒ですね」
「ですね」
景斗さんは、口元をゆるめた。
その瞬間、何かがちかっと光った気がした。
こんなふうに、誰かと何かが重なる感覚。いつからか、私はそれを怖がっていた気がする。怖がっていたのに、今日は怖くなかった。
私は、ミルクティーのカップを両手で包む。顔が少し熱い。
◇
帰り際。お店の外で別れようとしたとき、景斗さんが言った。
「今日は、ありがとうございました。楽しかったです」
「私も」
「……次は、遊園地に行きませんか?」
予想していなかった言葉に、心臓が大きく鳴った。
「如月さんと、もっといろんな話がしたくて」
遊園地──。
頭の中で、「終わりにするべきだ」という声がした。はっきりと、確かに聞こえた。
それでも、断る言葉が出てこなかった。
「……はい」
「良かった」
返事は短かったのに、その一言が、ひどく真剣に聞こえた。



