偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「俺、こういう話ができる人、あまりいなくて。どこに行っても、食事って会話のための場所になっちゃうから。ただ美味しいものを美味しいって言えるだけで、十分な気がします」

「私も、そう思います」

そっか。景斗さんも、ずっと気を張って生きてきたんだ。今日は、いつもどこかを見ているような目じゃない。ちゃんと、ここにいる。


お茶を飲みながら、話はあちこちに飛んだ。好きな季節のこと、街の好きな場所のこと。

「如月さんは、何か夢中になってることはありますか?」

ふいに、そう聞かれた。

「如月真白」として答えるなら、STELLAのこと、蒼空くんのことを言うべきかもしれない。だけど、口から出てきたのは違う言葉だった。

「メイクです」

「メイク?」

「はい。誰かをメイクで変えることが……いえ、変えるんじゃなくて」

考えてから、言い直した。

「もともと、その人の中にあるものを、見えやすくすることが好きで。その人が鏡を見たとき、顔が少し明るくなる瞬間があって。その顔を見るたびに、続けていて良かったって思うんです」

「……見えていないものを、引き出す感じですか?」

景斗さんが尋ねる。

「……そうです」

「それって、絵と似てるかもしれない」

私は顔を上げた。