窓際の席に着いてメニューを開くと、私は心の中でひっそり歓声を上げた。
パンケーキ、ミルクティー、チョコレートケーキ。どれも、西園寺家のあのお茶会とは桁が一つ違う、優しい値段だ。
「如月さん、何にしますか?」
「ええと……パンケーキを」
「俺もパンケーキにしようかな。あと、ミルクティー」
景斗さんはメニューをさらっと閉じた。
「この店、よく来るんですか?」
「ちょくちょく来ます。一人で」
へえ、意外かも。景斗さんみたいな人が一人でパンケーキを食べてる姿、なんだか想像できないな。
少しだけ、間があった。
何かを話そうとして、やっぱりためらっているような、不思議な沈黙。
「……実は、うちの親は知らないんです。俺がこういう店に来てること」
「え?」
「俺が外に出るときはいつも、ホテルのラウンジか、礼儀作法が大事な高級な店だと思ってる。確かにそういう場所にも行くけど、ずっと気を張ってないといけないから」
景斗さんは窓の外を見つめた。通りには、風に揺れる木々が並んでいる。
「ここは、ただ座っていられる。それだけで、全然違う」
落ち着いた声。誰かに向けて話しているというより、自分の中で確かめているような話し方だった。



