偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「所詮は素人」という声は、まだ頭の中にある。それは、本当のことかもしれない。

だけど、この子にとっては関係なかった。資格があるかどうかじゃなくて、動画が心に届いたかどうか。その先に、何かが生まれたかどうか。

震える指で、私はDMに返信した。

『メッセージ、ありがとう。友達ができて、本当に良かった。
あなたが勇気を出して一歩踏み出したから、その子と出会えたんだよ。
これからも応援してます』

送信すると、すぐに返信が来た。

『ありがとうございます! これからも動画楽しみにしてます!』

涙を拭いながら、私はもう一度カメラを立ち上げた。

「こんにちは、@makeup_magic_Hです」

少しだけ、間を取った。

「私は素人です。資格も何もない、ただのメイク好きな中学生です」

炎上するかもしれない。でも、自分の口で言わなきゃいけない気がした。

「それでも、私のメイクで誰かが少し前を向いてくれるなら──それが、私の続ける理由です」

送信ボタンを押した。

怖かった。でも、自分の気持ちを伝えられた。それだけで、十分だった。

スマホを置いて、私は窓の外を見た。もう完全に日が暮れている。

さっきまで心に張りついていた重さが、少しだけ薄れた。

全部消えたわけじゃないけど、それでいい。続ける理由が、ちゃんとある。

その夜は、心が少し軽かった。