帰り道、スマホに真白さんからメッセージが来た。
【ところで! 来週末の西園寺くんとのカフェ、やっぱりお願いできる? 推しの誕生日イベントには、どうしても行きたくて……】
さっきまでの、あの友情の空気はどこに。
思わず笑いながら、私は返信した。
【……わかった】
送信してから、自分の返答の速さに気づいた。断ろうと思えば、今からでも断れたのに、指が先に動いていた。
その理由については、今は考えないことにした。
◇
その夜。私は部屋の机にスマホを固定し、いつものようにカメラを回した。
映るのは、パレットを持つ私の手元と、鏡に映る片方の目元だけ。
今日のテーマは、『泣いたあとの腫れた目を、一瞬で元通りにする魔法』
悲しいことがあったり、自分に自信が持てない誰かのために。
そう思って私は、まぶたに淡い色をそっと重ねていく。
カメラを構えている間だけは、余計なことを考えなくて済んだ。
筆先から生まれる変化だけが、私の味方だった。
投稿してしばらく経った頃、ふと気になってコメント欄を開いた。
その瞬間、心臓が冷たい手でギュッとつかまれたみたいになった。
『所詮は素人のメイクでしょ』
『メイクなんかで、人は変わらない。調子にのるな!』
『顔出ししないのって、自分に自信がないブスだから?』
「……っ!」
画面の向こうからの冷たい視線に、私は動けなくなってしまった。



