偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


帰り道、スマホに真白さんからメッセージが来た。

【ところで! 来週末の西園寺くんとのカフェ、やっぱりお願いできる? 推しの誕生日イベントには、どうしても行きたくて……】

さっきまでの、あの友情の空気はどこに。

思わず笑いながら、私は返信した。

【……わかった】

送信してから、自分の返答の速さに気づいた。断ろうと思えば、今からでも断れたのに、指が先に動いていた。

その理由については、今は考えないことにした。



その夜。私は部屋の机にスマホを固定し、いつものようにカメラを回した。

映るのは、パレットを持つ私の手元と、鏡に映る片方の目元だけ。

今日のテーマは、『泣いたあとの腫れた目を、一瞬で元通りにする魔法』

悲しいことがあったり、自分に自信が持てない誰かのために。

そう思って私は、まぶたに淡い色をそっと重ねていく。

カメラを構えている間だけは、余計なことを考えなくて済んだ。

筆先から生まれる変化だけが、私の味方だった。

投稿してしばらく経った頃、ふと気になってコメント欄を開いた。

その瞬間、心臓が冷たい手でギュッとつかまれたみたいになった。

『所詮は素人のメイクでしょ』

『メイクなんかで、人は変わらない。調子にのるな!』

『顔出ししないのって、自分に自信がないブスだから?』

「……っ!」

画面の向こうからの冷たい視線に、私は動けなくなってしまった。