「ライブ映像をたまたま見て。蒼空くんがカメラの向こうに手を伸ばして『一人じゃないよ』って歌ってくれて。その瞬間、泣けてきちゃって」
その言葉を聞いたとき、息が少し止まった。
誰かに「一人じゃない」と言ってほしかった日のことを、私も知っている。転校するたびに、声をかけてもらえなかった教室の空気を。
真白さんと私は、境遇が違う。でも、その一言に救われた気持ちは分かる。
「真白さんにとって、蒼空くんってそういう存在なんだね」
「そう。だから推し活は、私の生きがいなの。ただの趣味じゃなくて、ちゃんと、私を支えてくれているものだから」
真白さんはこちらを向いて、はにかむように笑った。
「結城さんにとっての生きがいは、何?」
「うーん……メイク、かな。誰かをメイクで笑顔にできる瞬間が、私の生きがい」
「それ、素敵よ」
「真白さんの推し活も、素敵だと思う。本当に」
二人ともしばらく口を閉ざした。STELLAのグッズに囲まれた真白さんの部屋は、不思議と温かかった。
少し間を置いてから、真白さんが「ねえ、結城さん」と口を開いた。
「こんな私だけど……これからも、友達でいてくれる?」
「もちろん」
「良かった」
真白さんがほっとした顔をして、それからお互いにしばらく黙ったまま、STELLAのポスターを眺めた。



