「あれ? 芽依ちゃん今、声出てたよね?」
他の部員たちも気づいて、口々に言う。
「さっきと全然違う!」
「どうしたの!?」
芽依ちゃんは照れくさそうに、今度はちゃんと前を向いて、「ちょっと、コツを教えてもらいました」と答えた。
メイクは、顔を変えるだけじゃない。顔が前を向けば、声も前を向く。声が変わると、きっと世界の見え方も変わる。
そのことに気づけたのは、今日が初めてだった。
◇
週末の午後。私は真白さんに呼ばれて如月邸を訪れた。
部屋に通された瞬間、言葉を失った。
す、すごい……。
STELLAのポスターが、壁を埋め尽くしている。
CD、DVD、ぬいぐるみ。うちわに、アクリルスタンド──。
棚も床も、STELLAグッズでいっぱいだった。
「これが私の宝物! 蒼空くんの笑顔、最高でしょ!?」
鼻息荒く話す、真白さん。
「……真白さん、彼のことが本当に好きなんだね」
「当たり前でしょ! 蒼空くんがいたから、辛いときも頑張れたんだもの!」
真白さんはそう言って、ベッドに腰を下ろした。
さっきまでのはしゃぎ声から、ちょっとだけトーンが変わった。
「実はね……私、小学生の頃、孤独だったの」
「……え?」
「ピアノも、マナーも、英会話も、全部『如月家の令嬢として必要なこと』。私がやりたいことは、一個も聞いてもらえなくて。そんなとき、蒼空くんを知ったの」
真白さんが、ポスターの蒼空くんに目を向ける。ピンクの髪がトレードマークの、笑顔が眩しい男の子。



