偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「あれ? 芽依ちゃん今、声出てたよね?」

他の部員たちも気づいて、口々に言う。

「さっきと全然違う!」

「どうしたの!?」

芽依ちゃんは照れくさそうに、今度はちゃんと前を向いて、「ちょっと、コツを教えてもらいました」と答えた。

メイクは、顔を変えるだけじゃない。顔が前を向けば、声も前を向く。声が変わると、きっと世界の見え方も変わる。

そのことに気づけたのは、今日が初めてだった。



週末の午後。私は真白さんに呼ばれて如月邸を訪れた。

部屋に通された瞬間、言葉を失った。

す、すごい……。

STELLAのポスターが、壁を埋め尽くしている。

CD、DVD、ぬいぐるみ。うちわに、アクリルスタンド──。

棚も床も、STELLAグッズでいっぱいだった。

「これが私の宝物! 蒼空くんの笑顔、最高でしょ!?」

鼻息荒く話す、真白さん。

「……真白さん、彼のことが本当に好きなんだね」

「当たり前でしょ! 蒼空くんがいたから、辛いときも頑張れたんだもの!」

真白さんはそう言って、ベッドに腰を下ろした。

さっきまでのはしゃぎ声から、ちょっとだけトーンが変わった。

「実はね……私、小学生の頃、孤独だったの」

「……え?」

「ピアノも、マナーも、英会話も、全部『如月家の令嬢として必要なこと』。私がやりたいことは、一個も聞いてもらえなくて。そんなとき、蒼空くんを知ったの」

真白さんが、ポスターの蒼空くんに目を向ける。ピンクの髪がトレードマークの、笑顔が眩しい男の子。