偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「……わたし、やっぱりダメです。練習しても、練習しても……」

「初日より、ちゃんと大きくなってるよ?」

「それでも、まだ届かなくて……」

私は少し考えた。芽依ちゃんを見ていると、届かない理由が声そのものにあるんじゃない気がした。

視線が下に落ちたまま、顎が引けている。前を向いていないから、言葉の行き場がないのかも。

「ちょっと待ってて」

私は、カバンからポーチを取り出した。

「ねえ、芽依ちゃん。一個だけ試してほしいことがあるんだけど」

鏡の前に芽依ちゃんを座らせて、道具を広げた。

芽依ちゃんの目は大きくて、睫毛が長い。ただ、うつむく癖のせいで上まぶたに影が落ちて、目の存在感が消えている。

ここに光を足せば、顔を上げたくなるはずだ。

細いブラシにラメ入りのアイシャドウを取って、上まぶたの中央にそっと乗せる。光が当たると、ふわりと輝く。まるで小さな星が、まぶたにのったみたい。

それから、下まぶたの目頭側にだけ、明るいハイライトをほんのり入れた。光を集めて跳ね返す小さな鏡みたいに、瞳をウルッと輝かせる魔法だ。

「……終わったよ。鏡、見て」

芽依ちゃんが鏡をのぞき込んで、しばらく黙った。