偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「今の自分を、変えたくて」

真っ直ぐな言葉だった。声は小さいのに、その一言だけ、はっきり聞こえた気がした。

「じゃあ、次の練習から来てみて? 部長にも伝えておくね」


数日の練習を経て、芽依ちゃんは村人Aの台詞三つに挑戦することになった。

「では、芽依ちゃん。セリフ、お願い」

「は、はい……」

芽依ちゃんが、台本の位置に立った。台本を持つ手が、小刻みに震えている。

「村に……あの、お、おお……」

声が出なかった。というより、出てはいるけど、ほとんど聞こえない。

「芽依ちゃん、もう少し声を大きく!」

「す、すみません……」

部長に言われ、芽依ちゃんはうつむいた。

翌日も、その翌日も、状況は変わらなかった。声は少しずつ大きくなっているけど、まだ部室の端まで届かない。

芽依ちゃん自身がそれを一番感じているのか、練習のたびに表情が曇っていく。

4日目の練習後。芽依ちゃんは部室の隅の窓辺に座って、台本を膝に乗せたまま、ずっと下を向いていた。

「芽依ちゃん、大丈夫?」

心配になった私は、声をかけた。