偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜



「怖いのはわかる。でもさ──隠してたら、もったいないじゃん! あたしが一番、陽葵のこと推してるのに!」

その言葉に、思わず笑ってしまった。笑いながら、なぜか鼻の奥がつんとした。

「……咲季らしい」

「だって、ほんとのことだもん」

咲季は少し考えてから、私の腕をぽんと叩いた。

「いつかみんなに、本当の陽葵を見せられるといいね。あたしは、ずっと応援してるから」

「……ありがとう、咲季」

「大丈夫。あなたの秘密は、絶対に守るから!」

咲季が胸を叩いて笑う。

踊り場の窓から、秋の空が見えた。薄い水色の空に、ひつじが群れているみたいな小さな雲が広がっている。

誰かにまるごと信じてもらえることが、こんなに温かいんだ。

そのときふと、気がついた。

みずきちゃんには「自分の良さを信じて」と思ったのに、私は自分のことを信じていないのかもしれない。咲季が言った通りに。

その気づきが、胸の奥でじっとしていた。