偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


否定しなきゃって思うのに。喉の奥がカラカラに乾いて、うまく声が出ない。

「な、なんで……」

「だって、あの手の動き、陽葵そっくりだもん。部室で道具使うときの動き。それに──ペンだこの位置まで同じだよ」

言葉が出なかった。

……まいったな。他の人はだませても、咲季だけはだませないんだ。

張り詰めていた肩の力が、ふっと抜けた。

「……へへ。バレてた?」

「うん。あたし、陽葵のことを一番よく見てるから」

『よく見てる』という言葉が、胸にじんわりと落ちてきた。

「……実は、ずっと秘密にしてたんだ。顔を隠して、メイク動画を出してること」

「知ってる。なんとなく気づいてた。でも、なんで隠してるの?」

「……注目されるのが怖いから。フォロワーさんたちは、私の手元とメイクを見てくれてる。でも……」

私は、自分の膝をぎゅっと掴んだ。

「私が誰か分かったら、みんな、ガッカリすると思う。魔法が解けたあとの、何でもない私の顔を見たら。それが怖くて、どうしても顔が出せないの」

咲季は黙って聞いていた。しばらくしてから、静かに口を開いた。

「ねえ、陽葵。正直に言っていい?」

「……うん」

「陽葵って、自分のこと全然信じてないよね」

予想外の言葉に、私は目を瞬かせた。

「メイクの腕前は本物だし、みずきちゃんのこと、昨日こっそり見てたよ。あの子の顔、すごく変わってた。あれ、陽葵にしかできないことだよ。なのに、なんで隠す方向にしか行かないの?」

「それは……」