偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「おはよう、陽葵!」

学校に着くと、咲季が廊下で手を振りながら走ってきた。

「ねえ、昨日バズってたメイク動画見た? 学校メイク、めっちゃ参考になった!」

「あ、うん。見たよ」

『それ、私のだよ』って言えたら、どんなに楽か。その言葉を飲み込んで、笑顔で頷いた。

そのまま教室に入ろうとすると、咲季が私の袖を引いた。

「……陽葵。ちょっと、来て」

「え?」

咲季に連れてこられたのは、屋上へ続く踊り場。誰もいない、静かな場所。

「どうしたの? 咲季」

咲季は私の前に立つと、いたずらっぽく笑って、私のポーチから少しだけのぞいている「あるもの」を指差した。

「陽葵、実はさ……あたし、気づいちゃったんだけど」

「……何を?」

「あのバズってるメイク動画、陽葵が持ってるのと同じ、限定のブラシが映ってたよね?」

「っ!」

ドクン、と心臓が跳ねた。

もしここでバレたら、真白さんとのことも何もかも全部、崩れてしまう。

「ねえ。あのメイク動画の投稿者って、陽葵なんでしょう?」