偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


そう思って口を開きかけたものの、言葉が続かなかった。

景斗さんに、また会える。その気持ちが、胸の奥でこっそり顔を出していたから。

「……わかった」

結局、また同じ答えを返していた。電話を切って、しばらく天井を見つめた。

嬉しい、という気持ちが、確かにあった。あってはいけないのに。


気分転換に、私はいつものようにメイク動画を撮って投稿した。

今日のテーマは、『ナチュラルだけど盛れる! 学校メイク』だ。

カメラを構えると、頭の中が静かになる。

景斗さんのことも、次のカフェのことも、特待生のことも、全部頭の外へ押し出されていく。

ブラシを動かしている間だけは、手元にあるものが全てだった。


翌朝。スマホを確認しようとした瞬間、通知が止めどなく流れ込んできた。

画面を埋め尽くすコメント、いいね、フォロー通知。チャンネル全体の動画再生回数が、いつの間にか300万回を超えていた。

手が止まった。思っていたより、ずっと大きな数字だ。コメント欄には、たくさんのメッセージが流れている。

『学校メイク、マジ参考になる!』

『先生にバレないギリギリのラインって、まさにそれ!』

誰かの役に立てている。その実感と、注目が集まるほど正体がバレそうで怖い、という気持ちが、同時にやってきた。