偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


翌朝。みずきちゃんは昨日と同じメイクをして、教室に来た。

髪も整っていて、制服のリボンもきちんと結ばれている。明るい表情で自分の席に向かうその背中が、昨日より少しだけ伸びていた。

「え、みずき……! なんか雰囲気変わったね」

昨日笑っていた子の一人が、戸惑ったように言った。

嫌味の代わりに出てきたのが、その一言。それだけで、何かが動いた証拠に思えた。

みずきちゃんは「ありがとう」と短く答えて、前を向いた。

完全に仲良くなったわけじゃない。でも、昨日とは明らかに違う。

遠くからその様子を見ていた私は、ゆっくりと息を吐いた。

良かったね、みずきちゃん。


みずきちゃんへのメイクをした、次の日の夜。真白さんから電話があった。

『結城さん! 次のデート、西園寺くんとカフェに行くことになったの! お願い、もう一回だけ!』

「……なったの、って。向こうから誘ってきたんじゃなかったっけ」

『そうなの。西園寺くんがカフェがいいって。だけど、来週は、蒼空くんの誕生日を祝うファンイベントがあって……』

ファンミに、ライブ。そして、誕生日イベント……年間で、一体いくつのイベントがあるんだろう、この人の推し。

「……ちょっと待って」

今度こそ、断らなきゃいけない。