偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「……あれ。なんか……目、大きくなった?」

「もともと大きいんだよ。くすみが取れただけ」

みずきちゃんは鏡をじっと見たまま、眉をわずかに寄せた。

「……これ、本当に私?」

「そうだよ。変えたんじゃなくて、そこにあったものを出しただけ」

みずきちゃんがゆっくりと顔を上げた。鏡の中の自分と、目が合った瞬間、表情がほどけて、唇がわずかに開いた。

「……なんか」

みずきちゃんの声が、震えた。

「なんか、ちゃんとここにいる感じがする」

「……うん。いるよ。ちゃんと」

みずきちゃんは私の声を聞いて、ぽろっと涙をこぼした。

泣きたくないのに泣いてしまう、という顔だった。それを見た瞬間、私の目の奥も熱くなった。

「ありがとう、陽葵ちゃん……」

誰かを変える瞬間が好きだ、とずっと思っていた。でも、変わった誰かに「ありがとう」と言ってもらえたのは初めてだった。

それは、思っていたよりずっと大きな喜びだった。

「本当にありがとう」

みずきちゃんは、何度も頭を下げた。

私は「どういたしまして」と言いながら、道具をポーチに戻した。

その手が、少し震えていた。