偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「私、こういうの似合わないから……」

「大丈夫。メイクは、魔法だから」

「……魔法」

みずきちゃんは小さく繰り返した。それから、おそるおそる首を縦に振った。

「じゃあ、目を閉じててね」

道具を取り出して、みずきちゃんの顔をまじまじと見た。

色白でまつ毛も長いし、目の形も整っている。ただ、自分の顔の良さをまだ知らないだけだ。

この子に必要なのは、別人に変えることじゃない。もともとそこにある魅力を、見えやすくしてあげるだけでいい。

まず、目元の「くすみ」をコンシーラーで消していく。

お絵かきのときに、汚れたところを白の絵の具でトントンとなおすみたいに。それだけで、顔がパッと明るくなった。

眉を少し整えて、アイシャドウは薄いピンクベージュ。まぶたに、春の光をそっとのせるイメージだ。

派手にするんじゃなく、今のみずきちゃんが一番きれいに見えるように。

唇にほんの少し色を足して、みずきちゃんの髪を丁寧に梳かし、リボンも結び直した。

「完成。鏡、見て」

コンパクトを差し出すと、みずきちゃんはゆっくりと鏡をのぞきこんだ。