そして、その後も私は畳み掛けるようにやってしまった。
しばらくして、景斗さんのお母さまが「最近、買い物が楽しくて」という話を始めた。
近所に新しいスーパーができて、ひとりで立ち寄ってみたらしい。
「今日は卵が安くて、つい買いすぎてしまいましたわ」
「もしかして、特売日ですか!?」
気づいたときには、身を乗り出していた。
テーブルがしんと静まり返った。
景斗さんのお母さまが目を丸くし、真白さんのお母さまが困ったような笑顔を浮かべている。景斗さんだけが──こちらをじっと見ていた。
「……えっと、そういうお買い得な日って、楽しいですよね、と思って」
「如月さん、特売日が好きなんですか?」
景斗さんが聞く。彼の口元が上がっていた。
「いえ、そういうわけでは……」
「如月さんって、本当に面白いですね」
景斗さんが声を出して笑った。低くて、あたたかい笑い声だった。
前回あんなに無表情だった人が、今日はもう何度も笑っている。
「今日の如月さんのほうが、俺は好きです」
景斗さんはそう言って、ほんの少し寂しそうな笑みを見せた。
その言葉が、一瞬だけ時間を止めた気がした。
「好き」という言葉が、頭の中でうまく処理できない。冗談なのか、社交辞令なのか、それとも──。



