偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「怪しむというより……」

景斗くんはカップを置きながら、続けた。

「もっと知りたかった。それだけ」

私は、ミルクティーのカップに手を伸ばした。

「舞台で見た陽葵は、キラキラと輝いていた」

「……あの時間があったから、舞台に立てた気がします。偽りの名前で会っていたあの日々も含めて、景斗くんがいてくれたから。私は本当の自分で、前に出ることができました」

景斗くんは黙って、窓の外に目をやった。

「俺もだよ。陽葵といると、ただの西園寺景斗でいられる」

「私は一般庶民の、メイク好きな普通の中学生ですよ?」

「うん。だから、いい」

そんなふうに言ってもらえるなんて、嬉しいな。

しばらくして、パンケーキが来た。ふわふわで、最初に食べたときと何も変わらない。

二つのお皿が並んで、形まで同じだった。

「いただきます」

景斗くんとぴったり同じタイミングで言って、肩の力が抜けた。

一口食べた瞬間、思わず顔がほころんだ。

「やっぱり、おいしい」

「ほんとに」

景斗くんも頷いた。

「ここのパンケーキ、生地が違うって話、覚えてる?」

「もちっとしてて、バターが中からじゅわっと出てくる感じ」

「そうそう、それ」

二人で同時に頷いた。

最初のときと同じ会話。だけど今日は、「真白」じゃなく「陽葵」として笑っている。

「将来のこと、ちょっとだけ話してもいい?」

景斗くんが、カップに目を落としながら言った。