偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「あ、す、すみません。つい……」

「いや」

景斗さんは、声を出さずに口の端だけを持ち上げた。

「そっちのほうがいい」

「え……」

「景斗くん、でいいよ。俺も……陽葵、って呼んでいい?」

「は、はい……」

心臓が、変な音を立てた。

「できました。スマホのカメラで確認してみてください」

景斗くんはスマホを受け取って、インカメラを開いた。そして、しばらく黙って見つめていた。

「……なんか、印象が違う」

「気に入らないですか?」

「ううん。すっきりした感じ」

「疲れた感じが、取れたと思います。景斗くんって、いつも目が疲れてそうだったから」

「よく見てるね」

「メイクって、その人の顔をちゃんと見ることから始まるので」

「そっか」

スマホを返しながら、景斗くんが言った。

「陽葵がメイクをするときの目、すごく真剣だった。こっそり目を開けて、見てたよ」

「……え、見てたんですか?」

「当然でしょ。好きな子のことは、やっぱり見ちゃうよ」