偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


文化祭から、一週間が過ぎた。

11月になり、朝の自転車通学で頬に当たる風がひりっとするようになった。

校庭の木々は赤や橙に染まり、風が吹くたびに葉がはらはらと落ちていく。

放課後。咲季と並んで商店街を歩きながら、私はマフラーを引き上げた。

「で? 西園寺くんと、次はいつ会うの?」

咲季が横からぐいっと、顔を寄せてきた。

「……まだわからない」

「え、連絡先は?」

「交換してない」

「ええっ、なんで!?」

「うるさい」

私は逃げるように、先に歩き出した。咲季の笑い声が、後ろから追いかけてきた。



その数日後。真白さんから『西園寺くんに連絡先、渡しておいたから』と連絡が来た。

その夜、宿題を終えてベッドに倒れ込んだところで、スマホが震えた。

画面を見ると、景斗さんからのメッセージだった。

『今度、俺の好きな場所に連れて行ってもいいですか?』

私は、その一文をしばらく見つめた。

文化祭のあと、控室の前の廊下で別れる直前、私は『今度会ったら……私の好きな場所に、お連れしてもいいですか』と言っていた。

景斗さんは少し驚いた顔をして、それから「もちろん」と言ってくれた。

今度は、景斗さんが同じことを言ってくれた。

なんだか嬉しくて、頬が自然とゆるんだ。

『はい、ぜひ』

送信して、スマホを胸の上に置いた。天井を見上げながら、私はそっと目を閉じた。