偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「その西園寺くんとは、どうなの?」

予想外の質問に、すぐに言葉が出なかった。

「……また会うことになりました」

お母さんは、すっと口角を上げた。

「そっか。良かったわね」

それだけ言って、冷めかけた野菜スープを温め直しに立った。その背中が、なんだか嬉しそうに見えた。

「お母さん、また教えてね。昔のこと」

「うん。またいつか、ちゃんと話すね」



翌日の夜。私は自分の部屋でスマホを手に持ったまま、しばらく考えていた。

画面には、『@makeup_magic_H』のアカウントが開いている。

今までずっと、私は顔を隠してきた。手元と目元だけを映して、それが私のルールだった。

注目されるのが、ありのままの自分を見せるのが、怖かったから。

だけど先日、私は舞台の上で、何百人もの人の前に立った。ただの陽葵のまま、立った。

だから……もう、隠さなくていい。