「その西園寺くんとは、どうなの?」
予想外の質問に、すぐに言葉が出なかった。
「……また会うことになりました」
お母さんは、すっと口角を上げた。
「そっか。良かったわね」
それだけ言って、冷めかけた野菜スープを温め直しに立った。その背中が、なんだか嬉しそうに見えた。
「お母さん、また教えてね。昔のこと」
「うん。またいつか、ちゃんと話すね」
◇
翌日の夜。私は自分の部屋でスマホを手に持ったまま、しばらく考えていた。
画面には、『@makeup_magic_H』のアカウントが開いている。
今までずっと、私は顔を隠してきた。手元と目元だけを映して、それが私のルールだった。
注目されるのが、ありのままの自分を見せるのが、怖かったから。
だけど先日、私は舞台の上で、何百人もの人の前に立った。ただの陽葵のまま、立った。
だから……もう、隠さなくていい。



