偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「……怒ってないよ」

お母さんはやわらかく笑った。

「驚いた。まさか陽葵が、そんなことをしていたなんて。でも、陽葵が自分で考えて、自分で動いたんでしょ。失敗もしたかもしれないけど、ちゃんと自分で向き合ったんでしょ」

私は頷いた。

「それなら、お母さんには怒る気持ちにはなれないよ」

「え……?」

お母さんが、遠い目をした。

「陽葵が舞台に立ったって聞いて、お母さん、あのときのことを思い出したよ。あの頃のお母さんの気持ち、陽葵もわかったでしょ」

私は、首を縦に振った。

お母さんが感じた景色を、今日私も見た。光の中に立って、たくさんの瞳が輝いていて。言葉にしなくても、同じ景色を見たんだということがわかった。

ずっと怖かった報告が、こんなにあっさり受け止めてもらえた。肩からすっと力が抜けた。

「身代わりの件だけど」

お母さんが真剣な顔で言った。

「次からは、一緒に考えようね。どんなことでも」

「……うん。ごめんなさい」

お母さんに向かって、頭を下げた。

「ところで、陽葵」

「何?」