偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


「今度会ったら……私の好きな場所に、お連れしてもいいですか」

景斗さんは目を見開き、それから口角を上げた。

「もちろん」

ふわりと微笑むと、景斗さんは廊下の向こうへ歩いていく。その背中が見えなくなってから、私はようやく壁にもたれた。

膝から力が抜けそうだった。でも、今度は恐怖じゃなかった。

「……ふふ。聞いちゃった」

廊下の角から、咲季が顔を出した。

「……え。まさか、ずっとそこにいたの?」

「ううん、途中から」

咲季はへらっと笑って、私の隣に来た。

「どうだった?」

「……好きだって、伝えた」

「やったじゃん、陽葵!」

咲季が肩を叩いてきた。少し痛かったけど、嬉しかった。



体育館のロビーに向かうと、人混みの中から声がした。

「結城さん!」

真白さんが駆けてきた。彼女の目が、うるんでいた。

「舞台、すごく良かったわ……! 私、感動しちゃった!」

「……見てくれたんですか?」

「当たり前でしょ! 結城さんの晴れ舞台なんだから!」

真白さんはそう言って、少し照れたように眉を下げてにっこりした。

「実はね、結城さんに背中を押してもらったから、私も勇気を出せたの」

「え?」