偽りのお嬢様〜不器用な御曹司は、素顔の私を離さない〜


【景斗side】

星ヶ丘学園の文化祭は、保護者や地域の人も来られる一般公開日で、受付でスタッフから来場者カードを受け取ってから体育館に向かった。

客席の端に、俺と洸は並んで座った。

洸は開演前から「景斗が行くって言うから来たけど」とぼやいていた。

俺が「来なくていい」と言っても、結局ついてきた。こいつは、いつもそういうやつだ。

幕が上がり、舞台が始まってから俺はずっと、彼女のことだけを見つめていた。

最初に出てきたとき、彼女の足が震えているのがわかった。それでも彼女は逃げなかった。

継母に叱られる場面。うつむいて唇をかみしめるその横顔に、心の底からの悔しさがあった。

シンデレラが泣く場面。遠くからでも、彼女の目が濡れているのがわかった。あれは演技じゃない。きっと、心からあふれた涙だ。

変身の場面では、水色のドレスをまとって舞台に戻ってきた彼女の姿勢が変わっていた。あのカフェで、メイクについて語っていたときの顔と重なった。

俺は、初めて本当の彼女を見た気がした。

そして、クライマックス。

「私は、本当の自分を隠していました」

彼女の声が響いた瞬間、俺は息を止めた。

「魔法で着飾って、あなたに会いに来ました」

そうだ。君も、魔法のメイクで俺に会いに来た。シンデレラと一緒。

「あなたに会えて……初めて、本当の自分を出す勇気をもらいました」

それは、俺も同じだった。君と一緒にいた時間だけが、俺がただの自分でいられた時間だったんだ。

君が誰であっても、あの時間は本物だった。