物語は、いよいよクライマックス。シンデレラが王子様の前に立ち、ガラスの靴を差し出される場面。
舞台の中央で、深く息を吸った。
「私は、本当の自分を隠していました」
台本の言葉が、今は自分の言葉として口から出ていた。
「魔法で着飾って、あなたに会いに行きました。でも……」
私は一歩、前に出た。
「あなたに会えて、初めて本当の自分を出す勇気をもらいました」
息を吸った。
「……どうか、ガラスの靴が合うかどうか、確かめてください」
体育館が、しんと静まり返った。
こちらを見つめる一つひとつの視線が、静かに光っている気がした。
これがお母さんの言っていた景色なんだ。
何百人もの視線が私に集まっているのに、もう怖くなかった。
王子役の男子部員が前に進み出て、ガラスの靴を差し出した。私の足がすっと収まった。
その瞬間、割れるような拍手が体育館中を包み込んだ。



