『――黒の王。お迎えにあがりました』
その声は冷たい氷が触れ合うような、澄んだ響きだった。
『さあ、参りましょう』
悪奪鬼さんがゆったりとした仕草で、平に向かってうやうやしく一礼した。
さっきまでの殺気が、ウソのように消え失せている。
敵であるはずの相手が見せた、場違いなほどの敬意。
「迎え……? 俺を……?」
平が額を強く押さえ、苦しげに視線をさまよわせる。
その様子を見て、わたしの胸がキュッと締め付けられた。
目の前の悪奪鬼さんは、わたしたちが決して入り込めない、遠い遠い時間の果てを知っているような目をしていたから。
『黒の王よ。あのような人間どもとの「お遊び」は、もう十分でしょう? さあ、我ら、あやかしの頂へ』
悪奪鬼さんが優雅に手を差し伸べた。
指先からもれ出した黒い炎が、平をからめとる鎖のように、音もなく伸びていく。
それは、平を『こちら側』から『あちら側』へ引きずり込もうとする境界線みたいで――。
「……そんなの、ダメ!!」
わたしの叫びが、屋上に鋭く響き渡った。
膝はガクガクと震え、心臓の音が耳元でうるさいくらいに鳴っている。
それでも、バーコードリーダーを握る指先には、今までで一番強い力を込めた。
その声は冷たい氷が触れ合うような、澄んだ響きだった。
『さあ、参りましょう』
悪奪鬼さんがゆったりとした仕草で、平に向かってうやうやしく一礼した。
さっきまでの殺気が、ウソのように消え失せている。
敵であるはずの相手が見せた、場違いなほどの敬意。
「迎え……? 俺を……?」
平が額を強く押さえ、苦しげに視線をさまよわせる。
その様子を見て、わたしの胸がキュッと締め付けられた。
目の前の悪奪鬼さんは、わたしたちが決して入り込めない、遠い遠い時間の果てを知っているような目をしていたから。
『黒の王よ。あのような人間どもとの「お遊び」は、もう十分でしょう? さあ、我ら、あやかしの頂へ』
悪奪鬼さんが優雅に手を差し伸べた。
指先からもれ出した黒い炎が、平をからめとる鎖のように、音もなく伸びていく。
それは、平を『こちら側』から『あちら側』へ引きずり込もうとする境界線みたいで――。
「……そんなの、ダメ!!」
わたしの叫びが、屋上に鋭く響き渡った。
膝はガクガクと震え、心臓の音が耳元でうるさいくらいに鳴っている。
それでも、バーコードリーダーを握る指先には、今までで一番強い力を込めた。



