ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの初恋が熱を持った。不器用に重なり合うふたりの想いが、やがてひとつの場所へとたどり着くまでの甘い軌跡~【完結】

 ◇

 部長として各テーブルを回り忙しそうにしていた正人くんが、ようやく私たちのところにやってきた。

「よー! 楽しんでるかー!」

「まさとん、おつ〜」
 いずみが労いの言葉をかけた。

 新入生同士で盛り上がり始めたのを見計らって、私たちは三人で話し始めた。

「昨日も面接でさあー。たぶん落ちたわ」

 いつもの調子でカラッとそう言って、手元のジョッキを大きく傾ける正人くん。

 正人くんと私は現在、絶賛就活中だ。
 私は色々な選択肢を考えた結果、地元には帰らず、東京で働くことを決めている。
 いずみは卒業を遅らせて、まもなく海外へ留学する予定になっていた。

「やっぱり寂しい……」

 私がポツリと呟くと、いずみも「美絵〜」と瞳を潤ませる。

「遊びにきてね! 絶対っ」

「うん、絶対行く!」

 私たちは、改めてそう強く約束を交わした。

 枝豆を口の中にポイッと投げながら、正人くんが思い出したように尋ねてきた。
「そういや、祥太郎は今福島だっけ?」

「うん。教育実習、ゴールデンウィーク明けから始まるからね」

 祥ちゃんは体育の先生になるため、大事な教育実習を控えている。
 実習の場所は――私たちが出会った、あの中学校。
 そのため、事前に福島に戻り、手続きなどを進めているのだ。

「あいつ、教師を地元か東京どっちでやるかは、まだ決めてないんだよな?」

「……うん」
 正人くんの問いに、私は少しだけ声を落として頷いた。

 夏までには結論を出さなければいけないのだけど、彼はまだ決断していない。
 「私のことは気にしないで、祥ちゃんがやりたい方にしてね」と伝えてはある。
 でも……正直なところ、彼の決断を聞くのは少しこわい。

 もし東京と福島、になったら。
 決して会えない距離ではないけれど、教師という大変な仕事に就く祥ちゃんとは、定期的に会えるかどうかわからないからだ。

「美絵も帰るんだよね? ゴールデンウィーク」
 少し沈んでしまった私の気持ちを晴らすように、いずみが明るい笑顔で問いかけてきた。

「うん。祥ちゃんと、中学校で会うんだ」

「なんで学校?」

 正人くんに聞かれ、枝豆を手に取りながら答える。

「卒業生は休日なら自由に入れるらしくて、一緒に行かない? って」

「……ふーん? なんか意味深だなー」

 正人くんはイシシと意地悪そうに笑いながら、いずみと含みのある視線を交わしていた。