ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの初恋が熱を持った。不器用に重なり合うふたりの想いが、やがてひとつの場所へとたどり着くまでの甘い軌跡~【完結】

 中学生のとき、遠くから見てくれていた私と、今、そばにいる私。
 彼にとって、それはまるで別の人であるように見えているのではないか。
 ずっと、そんな不安があった。

 けれど、祥ちゃんはすぐに、落ち着いた声で否定した。

「……幻滅? するわけないよ」

「でも……」

「俺は……なんていうか……美絵の存在が、好きだから」

 自分で言いながら、「……って、なんだそれ」と照れ隠しに小さく笑った。

「迷うことがあったら、全然頼ってほしいよ。俺だって……怪我から立ち直れたのも、間違いなくここで、他の誰でもない美絵が声をかけてくれたからだし。あれがなかったら、今の俺はいないと思うから……」

「…………」

(中学生の、あの日の私……祥ちゃんの救いになれてたんだ)

 胸がいっぱいになり、我慢していた涙がポロポロとこぼれ落ちた。

「……美絵が将来に焦りを感じてたこと、気づけなくて本当にごめん」

「……ううん。そんなに焦る必要がないのもわかってるんだけど……」

 祥ちゃんは前を向いたまま続ける。

「……体育学部はさ、もともと目的を持って入ってくる人が多いから、将来目指すものが既にはっきりしてることも多いけど。ほとんどの大学生は、これから見つけていくんじゃないかなと思う。逆に考えると、選択肢がたくさんあるってことだし」

 その言葉が、強張っていた心にスッと染み込んでいき、一気に心が軽くなる。
 なんでもっと早く相談しなかったんだろうと後悔するくらいだ。

「……祥ちゃん、先生みたい」

 小さく呟いたら、祥ちゃんは「え、マジ? 無事になれるかな」と照れくさそうに微笑んだ。

「うん……絶対なれる」

 彼の夢を、彼の隣で応援したい。
 今は少しの無理もなく、心の底からそう思えた。

「とにかく、俺が美絵のこと嫌いになるとかはありえないから。俺の片思い歴なめないで」

 冗談めかして笑う祥ちゃんを見て、私も指で涙を拭いながら笑った。

「私も……祥ちゃんのことが、本当に大好き。会えなくて辛かった。嫌われたくなくて、正直な気持ちを話せなくて……時間がほしいなんて言って、ごめんなさい」

 そう言って俯くと、祥ちゃんはブランコから立ち上がり、私の前に来た。

 そして、ブランコに座る私に合わせて屈み込み、そのままぎゅーっと強く抱きしめた。