ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの初恋が熱を持った。不器用に重なり合うふたりの想いが、やがてひとつの場所へとたどり着くまでの甘い軌跡~【完結】

 今日からゴールデンウィークが始まる。

 美絵は、たしか最初の二日間はバイトが入っていないと言っていたはずだ。
 まだ午前中の早い時間帯だったが、意を決して電話をかけた。

 ――プルルルルッ……

 スマホを持つ手のひらに汗を感じながら、意味もなく狭い部屋の中を歩き回り、耳元で鳴り続けるコール音を聞く。

(……出ない)

 応答がないまま留守番電話に繋がり、途端に大きな不安が押し寄せてきた。

 美絵からの連絡は無視しておきながら、自分は一度目の電話に出てもらえないからといってショックを受けるなんて。
 その身勝手さにうんざりしてしまう。

 ただ――そのあと十秒もしないうちに、手に持ったままのスマホが震えた。

 美絵からの、折り返しだ。

 すぐに通話ボタンを押す。

「……っ、はい」

『祥ちゃん!? ごめん、すぐ出られなくて……!』

 焦ったような声が飛び込んできた。

 僕の名前を呼んで謝る、可愛い声。
 それを聞いただけで、張りつめていた心がほどけ、どうしようもない愛しさで胸がいっぱいになる。

「……こっちこそ。この前、会う約束してたのに連絡返さなくて……本当にごめん」

 深く後悔しながら謝ると、電話の向こうから、『ゴオオオッ……』と低い走行音のようなものが聞こえてきた。

「……もしかして、出かけてる?」

『あっ……うん。今、福島に帰ってる新幹線の中で。祥ちゃんから電話きたから、デッキに出てきたの』

(そうだったのか)

「ごめん。移動中に」

『ううん。声聞けて嬉しい……』

 その響きは、泣き出しそうなくらい切なく、優しくて。
 僕に対する、溢れるほどの愛情が詰まっているように感じられた。