「いやー、やっぱいい曲だよなー」
曲が終わり、満足げに振り返った正人が僕の顔を見て、ピタリと動きを止めた。
「え!? お前、何泣いてんの!?」
「…………」
「マサちゃんの熱唱に感動した!?」
「…………」
正人自身の『マサちゃん』呼びにもツッコめない。
何も答えずに俯いていると、正人の声のトーンが少しだけ真面目なものに変わった。
「……もしかして、ヨッシーとのこと?」
男同士で恋愛相談なんてするもんじゃない、とずっと考えていた。
ましてや、涙を見せるなんて……。
でも、一人で抱え込むには、今の状況はあまりにも苦しすぎた。
正人の問いかけに、気づけば僕は、せきを切ったようにポツリポツリと口を開いていた。
「……『いろいろと考えたい』って言われて、少し距離を置いてた。それで……会って話したいって言われたけど……振られそうだから、会いたくない。別れたくない」
自分の情けない本音をすべて吐き出した。
黙って聞いていた正人は、数秒の沈黙の後――。
「……プッ、ハハハッ!」
堪えきれなかったように吹き出した。
「……何がおかしいんだよ」
「あ、ごめんごめん!」
軽く睨むと、正人は僕の肩をバシバシと叩いた。
「いや、こんな駄々っ子みたいな祥太郎、初めて見たなと思って。いつも落ち着いた大人ぶってるけどさ……お前も普通の男子だったんだな!」
「……当たり前だろ? こっちは中学の時からずっと好きだったんだぞ!?」
ヤケになり、ムキになって言い返すと、正人はさらに大きな声で笑った。
ひとしきり笑った後、正人は少しだけ真面目な顔に戻って言った。
「『振られそう』ねえ。外野から見てても、ヨッシーも祥太郎のこと、めちゃくちゃ大好きに見えるけどな?」
「……状況は変わるんだよ」
自分で言っておきながら、ズキリと胸が痛む。
「えー?」
腑に落ちない様子の正人。
「……他の男が出てきたりとか、俺とのこと考えて苦しそうだったりとか……」
僕がそう言って黙り込むと、正人は腕を組んで天井を仰いだ。
「んー、わかんないけど。祥太郎のことが好きだから、悩んで苦しいんじゃないの? 好きな気持ちが冷める時の相手ってさ、もっとこう……自分に興味なさそうになるもんかなーって」
自分の過去のことを何か思い出したのか、苦笑いしている正人。
「とりあえず、ヨッシーとはちゃんと向き合えよ。振られるとは思わないけどさ……もし万が一振られたら、失恋ソング、一緒に朝まで歌って慰めてやるよ!」
正人はタブレットを操作しながら、「よし、練習しとこ」と呟いて、ド定番の失恋ソングを大量に予約し始めた。
「……縁起わりーな」
僕は呆れてため息をつきながらも、マイクを握った。
結局、四限が始まる直前まで、二人とも喉がガラガラになりながらも大声で失恋ソングを歌い続けた。
美絵と距離を置いてからずっと張り詰めていた僕の肩の力が、その時初めて、少しだけ抜けたのだった。
曲が終わり、満足げに振り返った正人が僕の顔を見て、ピタリと動きを止めた。
「え!? お前、何泣いてんの!?」
「…………」
「マサちゃんの熱唱に感動した!?」
「…………」
正人自身の『マサちゃん』呼びにもツッコめない。
何も答えずに俯いていると、正人の声のトーンが少しだけ真面目なものに変わった。
「……もしかして、ヨッシーとのこと?」
男同士で恋愛相談なんてするもんじゃない、とずっと考えていた。
ましてや、涙を見せるなんて……。
でも、一人で抱え込むには、今の状況はあまりにも苦しすぎた。
正人の問いかけに、気づけば僕は、せきを切ったようにポツリポツリと口を開いていた。
「……『いろいろと考えたい』って言われて、少し距離を置いてた。それで……会って話したいって言われたけど……振られそうだから、会いたくない。別れたくない」
自分の情けない本音をすべて吐き出した。
黙って聞いていた正人は、数秒の沈黙の後――。
「……プッ、ハハハッ!」
堪えきれなかったように吹き出した。
「……何がおかしいんだよ」
「あ、ごめんごめん!」
軽く睨むと、正人は僕の肩をバシバシと叩いた。
「いや、こんな駄々っ子みたいな祥太郎、初めて見たなと思って。いつも落ち着いた大人ぶってるけどさ……お前も普通の男子だったんだな!」
「……当たり前だろ? こっちは中学の時からずっと好きだったんだぞ!?」
ヤケになり、ムキになって言い返すと、正人はさらに大きな声で笑った。
ひとしきり笑った後、正人は少しだけ真面目な顔に戻って言った。
「『振られそう』ねえ。外野から見てても、ヨッシーも祥太郎のこと、めちゃくちゃ大好きに見えるけどな?」
「……状況は変わるんだよ」
自分で言っておきながら、ズキリと胸が痛む。
「えー?」
腑に落ちない様子の正人。
「……他の男が出てきたりとか、俺とのこと考えて苦しそうだったりとか……」
僕がそう言って黙り込むと、正人は腕を組んで天井を仰いだ。
「んー、わかんないけど。祥太郎のことが好きだから、悩んで苦しいんじゃないの? 好きな気持ちが冷める時の相手ってさ、もっとこう……自分に興味なさそうになるもんかなーって」
自分の過去のことを何か思い出したのか、苦笑いしている正人。
「とりあえず、ヨッシーとはちゃんと向き合えよ。振られるとは思わないけどさ……もし万が一振られたら、失恋ソング、一緒に朝まで歌って慰めてやるよ!」
正人はタブレットを操作しながら、「よし、練習しとこ」と呟いて、ド定番の失恋ソングを大量に予約し始めた。
「……縁起わりーな」
僕は呆れてため息をつきながらも、マイクを握った。
結局、四限が始まる直前まで、二人とも喉がガラガラになりながらも大声で失恋ソングを歌い続けた。
美絵と距離を置いてからずっと張り詰めていた僕の肩の力が、その時初めて、少しだけ抜けたのだった。



