ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの初恋が熱を持った。不器用に重なり合うふたりの想いが、やがてひとつの場所へとたどり着くまでの甘い軌跡~【完結】

 頭が真っ白になったまま、彼女からの連絡に応えられなかった翌朝。

 目を覚ますと、鉛のように身体が重かった。
 時計の秒針の音が、やけに部屋に響き渡るように感じる。

 今日は二限から授業がある。

(……このままサボってしまおうか)

 そんな考えが一瞬頭をよぎる。

 結局、根が真面目な自分の性格にうんざりしながらも、のろのろと支度をして家を出た。

 ◇

 講義室の席に座り、ただ虚空を見つめていると、後ろから「オーッス!」と声をかけられる。

 今の僕のどす黒い感情とは正反対の、やけに底抜けに明るい声。
 正人だった。

「……おー」

 力なく短く返す。

 正人は横の席にドカッと座り、「いやー、遅刻するかと思って乗り換え死ぬ気でダッシュしたらギリ成功したぜ」などと、なんでもない話をペラペラと独り言のように喋り始めた。

「…………」

 特に相槌を打つ気力もなく黙っていると、正人はチラッと僕の顔を覗き込み、眉を寄せた。

「……なんかお前、この前よりさらに顔死んでね?」

「…………」

 反論する気力すら起きない。
 僕は適当に誤魔化すことさえできず、そのまま黙り込み、やがて授業が始まった。

 ◇

 ――キーンコーン、カーンコーン。

 チャイムが鳴り、二限の終わりを告げた。

 重い溜息をつきながら鞄に荷物を詰めて立ち上がろうとした瞬間、正人にガシッと腕を掴まれた。

「……なんだよ?」

 驚いて顔をしかめると、正人はニカッと笑った。

「お前、三限ある?」
「……ないけど」
「四限は?」
「ある」
「よしっ。じゃあ、四限までデートしようぜ!」

「……はあ?」

 突然の、意味のわからない誘いに、思わず間の抜けた声が出た。