美絵のいない、無機質で長い一日が繰り返されていた。
大学の講義が終わったあと、バイトも入っていない夕方。
今日も薄暗い部屋で一人、ただぼーっとソファの上に寝転んでいた。
ふと、ローテーブルに置いていたスマホが震える。
身体を起こし、ゆっくり画面に視線を移すと、浮かび上がった二文字が目に入った。
――『美絵』
「…………っ」
その瞬間、ハッと現実に引き戻され、心臓が大きく音を立てる。
彼女の声……今すぐに聞きたい。
けれど、電話に出るのが怖い。
僕は、だいぶ女々しい臆病者になってしまったようだ。
彼女の口から決定的な言葉を聞かされるのが恐ろしくて、伸ばした手に力が入らない。
それでも、鳴り続ける着信音に急かされるように、そっとスマホを持ち上げ、通話ボタンを押した。
「……はい」
努めて穏やかに、動揺を悟られないように応える。
『……祥ちゃん』
電話の向こうから、久しぶりに聞く彼女の声。
それは、微かに震えていた。
「……うん?」
短く返すと、息を呑む気配がした。
『……会いたい……話したい』
そっとこぼれた言葉は、涙の気配を帯びていた。
僕と同じように、会えない寂しさを募らせてくれているのだろうか。
それとも――僕にとって辛い決断を伝えるのが心苦しくて、泣いているのだろうか。
どちらかわからなかったけれど了承し、明後日に会う約束をして電話を切った。
通話が切れた後も、しばらくスマホを握りしめていた。
(……久しぶりに声が聞けて、嬉しかった)
やっぱり僕は、美絵のことが、震えるほどに愛おしい。
明後日会えたら、彼女の陽だまりみたいな柔らかい笑顔が見たい。
もし叶うなら、この腕で強く抱きしめたい。
これまで僕に向けてくれた色とりどりの表情が、次々と頭に浮かぶ。
でも、もし彼女の気持ちがもう以前とは違っていたら。
あの特別な笑顔が、もう僕に向けられないとしたら――。
期待と不安で、心がぐちゃぐちゃになった。
その夜は、ほとんど眠れなかった。
大学の講義が終わったあと、バイトも入っていない夕方。
今日も薄暗い部屋で一人、ただぼーっとソファの上に寝転んでいた。
ふと、ローテーブルに置いていたスマホが震える。
身体を起こし、ゆっくり画面に視線を移すと、浮かび上がった二文字が目に入った。
――『美絵』
「…………っ」
その瞬間、ハッと現実に引き戻され、心臓が大きく音を立てる。
彼女の声……今すぐに聞きたい。
けれど、電話に出るのが怖い。
僕は、だいぶ女々しい臆病者になってしまったようだ。
彼女の口から決定的な言葉を聞かされるのが恐ろしくて、伸ばした手に力が入らない。
それでも、鳴り続ける着信音に急かされるように、そっとスマホを持ち上げ、通話ボタンを押した。
「……はい」
努めて穏やかに、動揺を悟られないように応える。
『……祥ちゃん』
電話の向こうから、久しぶりに聞く彼女の声。
それは、微かに震えていた。
「……うん?」
短く返すと、息を呑む気配がした。
『……会いたい……話したい』
そっとこぼれた言葉は、涙の気配を帯びていた。
僕と同じように、会えない寂しさを募らせてくれているのだろうか。
それとも――僕にとって辛い決断を伝えるのが心苦しくて、泣いているのだろうか。
どちらかわからなかったけれど了承し、明後日に会う約束をして電話を切った。
通話が切れた後も、しばらくスマホを握りしめていた。
(……久しぶりに声が聞けて、嬉しかった)
やっぱり僕は、美絵のことが、震えるほどに愛おしい。
明後日会えたら、彼女の陽だまりみたいな柔らかい笑顔が見たい。
もし叶うなら、この腕で強く抱きしめたい。
これまで僕に向けてくれた色とりどりの表情が、次々と頭に浮かぶ。
でも、もし彼女の気持ちがもう以前とは違っていたら。
あの特別な笑顔が、もう僕に向けられないとしたら――。
期待と不安で、心がぐちゃぐちゃになった。
その夜は、ほとんど眠れなかった。



