◇
そして、その日の夕方――。
家に帰った私は、部屋のサイドテーブルの前にちょこんと正座をしていた。
両手には、きつく握りしめたスマホ。
今日こそ、祥ちゃんに電話をしようと決めていた。
(今、バイト中じゃないかな……?)
(もし出なかったら、またあとでチャレンジしよう……)
頭の中で何度もシミュレーションを繰り返し、通話ボタンの手前で止めていた指を、思い切ってポチッと画面に押し当てる。
――プルルル……プルルル……
耳元で静かに鳴り響く呼び出し音を聞きながら、私は大きく深呼吸をした。
(どうか……出てくれますように)
五度目のコールが鳴ったところで、プッ、と音が途切れる。
『……はい』
電話の向こうから、祥ちゃんの低くて落ち着いた声が聞こえた。
ドクンと心臓が跳ね、身体が小さく震える。
「……祥ちゃん」
掠れた声で名前を呼ぶと、彼は少しだけ息を呑むような気配のあと、静かに答えてくれた。
『……うん?』
たったそれだけの、短い返事。
それなのに、彼がどんな顔をして、どんなに優しい心で私を受け止めようとしてくれているのかが痛いほど伝わってきて、目頭が熱くなる。
瞬きをする間もなく、凄いスピードで瞳にたまった涙が、ポロッと膝の上にこぼれ落ちた。
「……会いたい……話したい」
震える唇から絞り出せたのは、それだけだった。
本当は、「別れを考えているわけじゃない」とか、「待たせてごめんね」とか、最低限これだけは伝えておきたい、ということを、用意していたはずなのに。
祥ちゃんの声を聞いただけで、彼への恋しさが一気に溢れ出してしまって、言葉がすべて涙と一緒に流れてしまった。
『……わかった』
少しの沈黙のあと、祥ちゃんはただ優しく、そう言ってくれた。
私たちは、明後日の夕方に会う約束をした。
会う日は決めたから、それまでに、少しでもいいから自分の気持ちをまとめておこう。
これ以上、会えない時間が長引くのは、辛すぎる。
もし、会った時にすべてをうまく伝えきれなかったとしても、逃げずに、また次に伝えられるように頑張ればいい。
今はただ、彼と向き合いたい。
離れ離れになった時間があって、ようやくわかった。
私は自分が思っている以上に、心の底から、祥ちゃんのことが大好き。
頭で考える「好き」という気持ちだけじゃない。
声を聞いただけで涙がこぼれてしまうくらい、全身が勝手に反応してしまうくらい……どうしようもなく彼が必要なんだ。
ポロポロと流れ続ける涙を拭いながら、私はサイドテーブルに突っ伏して、冷たいスマホの画面を両手でぎゅっと抱きしめた。
そして、その日の夕方――。
家に帰った私は、部屋のサイドテーブルの前にちょこんと正座をしていた。
両手には、きつく握りしめたスマホ。
今日こそ、祥ちゃんに電話をしようと決めていた。
(今、バイト中じゃないかな……?)
(もし出なかったら、またあとでチャレンジしよう……)
頭の中で何度もシミュレーションを繰り返し、通話ボタンの手前で止めていた指を、思い切ってポチッと画面に押し当てる。
――プルルル……プルルル……
耳元で静かに鳴り響く呼び出し音を聞きながら、私は大きく深呼吸をした。
(どうか……出てくれますように)
五度目のコールが鳴ったところで、プッ、と音が途切れる。
『……はい』
電話の向こうから、祥ちゃんの低くて落ち着いた声が聞こえた。
ドクンと心臓が跳ね、身体が小さく震える。
「……祥ちゃん」
掠れた声で名前を呼ぶと、彼は少しだけ息を呑むような気配のあと、静かに答えてくれた。
『……うん?』
たったそれだけの、短い返事。
それなのに、彼がどんな顔をして、どんなに優しい心で私を受け止めようとしてくれているのかが痛いほど伝わってきて、目頭が熱くなる。
瞬きをする間もなく、凄いスピードで瞳にたまった涙が、ポロッと膝の上にこぼれ落ちた。
「……会いたい……話したい」
震える唇から絞り出せたのは、それだけだった。
本当は、「別れを考えているわけじゃない」とか、「待たせてごめんね」とか、最低限これだけは伝えておきたい、ということを、用意していたはずなのに。
祥ちゃんの声を聞いただけで、彼への恋しさが一気に溢れ出してしまって、言葉がすべて涙と一緒に流れてしまった。
『……わかった』
少しの沈黙のあと、祥ちゃんはただ優しく、そう言ってくれた。
私たちは、明後日の夕方に会う約束をした。
会う日は決めたから、それまでに、少しでもいいから自分の気持ちをまとめておこう。
これ以上、会えない時間が長引くのは、辛すぎる。
もし、会った時にすべてをうまく伝えきれなかったとしても、逃げずに、また次に伝えられるように頑張ればいい。
今はただ、彼と向き合いたい。
離れ離れになった時間があって、ようやくわかった。
私は自分が思っている以上に、心の底から、祥ちゃんのことが大好き。
頭で考える「好き」という気持ちだけじゃない。
声を聞いただけで涙がこぼれてしまうくらい、全身が勝手に反応してしまうくらい……どうしようもなく彼が必要なんだ。
ポロポロと流れ続ける涙を拭いながら、私はサイドテーブルに突っ伏して、冷たいスマホの画面を両手でぎゅっと抱きしめた。


