ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの初恋が熱を持った。不器用に重なり合うふたりの想いが、やがてひとつの約束へとたどり着くまでの甘い軌跡。~

「本当に、本当にありがとうっ! 美絵のおかげっ!」

 キャンパスの中庭のベンチで、千尋さんは私の手を両手でぎゅっと握りしめ、何度もお礼を言う。

 あの夜、母に「修平くんに、OB訪問をお願いできないか打診したい」と相談した。
 母は電話を切ったあと、すぐに彼のお母さんに連絡を取ってくれた。
 彼はすんなりOKしてくれたようだ。
 そして昨日、無事に修平くんの連絡先を千尋さんに伝えることができた。

 千尋さん曰く、向こうも仕事のスケジュール的に直近の方が都合をつけやすいらしく、トントン拍子に実施できることになりそうだ。

「いえ! 母経由で頼んだだけなので……千尋さんの力になれてよかったです」

 ホッとして笑い返す私に、千尋さんは「これでやっと一歩進めるよ〜」と心底嬉しそうな顔をした。

 私からも事前に、母から送られてきた修平くんの連絡先に、メッセージを入れておいた。

『お久しぶりです。OB訪問の件、了承していただいてありがとうございます。この方から連絡させてもらいます』

 それだけを打ち込み、千尋さんの連絡先を添えて送信した。

 少し事務的すぎるだろうか……とも思ったけれど、私には祥ちゃんがいる。
 いくら昔のこととはいえ、一応「元彼」という括りになる人なのだから、必要最低限の連絡にとどめ、きっちり距離はとっておこうと思ったのだ。

 ほどなくして返ってきた修平くんからの返信は、久しぶりの挨拶なども一切なく、ただ一言『わかった』とだけ書かれていた。

 その素っ気なさには拍子抜けしたけれど、必要以上のやり取りをせずに済んだことに、私は正直ホッとしていた。
 いくら千尋さんのためとはいえ、元彼と関わることに若干の後ろめたさもあった私にとって、その淡白さはむしろ救いだった。