「でさっ。今のスライダー、キレはあるんだけど曲がるのが早すぎない?」
「そうですね。バッターの目線が切れる前に曲がってるから、見極められやすいかも」
真希さんの野球談義は鋭く、そして止まらない。
隣で相槌を打ちながら、内心、落ち着かない気分でいた。
通路を挟んで斜め後方に、森さんの姿を見つけたのだ。
さりげなく、何度か確認してしまう。
照明を反射する栗色の髪が、天使の輪のように艶めいている。
(……本当は、あっちに座りたかったんだけど)
そんな本音が喉元まで出かかり、球場に入る直前に買った麦茶で強引に流し込んだ。
彼女が野球観戦を楽しめていれば、それでいいのだけれど。
正人や、同期のいずみという子と話す彼女は、やや俯いているように見えて、気になって仕方がなかった。
「おーい、祥くん。聞いてるー?」
「あ……すみません。聞いてます」
「もーっ。……あっ! ビール買おっと」
真希さんが売り子さんを呼び止める。
すると、視線の先で、通路へ出ていく森さんの背中を捉えた。
手にはハンカチが握られている。お手洗いに行くのだろうか。
ここから向かうには、酔っ払いでごった返すコンコースを抜けなければならない。
さっき、いかにもナンパしそうな男たちの集団を入り口で見かけたばかりだ。
あんなに目立つ彼女が、一人で歩いていたら――。
気づいたら、腰を上げていた。
「あれ? どっか行くの?」
ビールを手にした真希さんに、「すぐ戻ります」とだけ告げて、席を飛び出した。
「そうですね。バッターの目線が切れる前に曲がってるから、見極められやすいかも」
真希さんの野球談義は鋭く、そして止まらない。
隣で相槌を打ちながら、内心、落ち着かない気分でいた。
通路を挟んで斜め後方に、森さんの姿を見つけたのだ。
さりげなく、何度か確認してしまう。
照明を反射する栗色の髪が、天使の輪のように艶めいている。
(……本当は、あっちに座りたかったんだけど)
そんな本音が喉元まで出かかり、球場に入る直前に買った麦茶で強引に流し込んだ。
彼女が野球観戦を楽しめていれば、それでいいのだけれど。
正人や、同期のいずみという子と話す彼女は、やや俯いているように見えて、気になって仕方がなかった。
「おーい、祥くん。聞いてるー?」
「あ……すみません。聞いてます」
「もーっ。……あっ! ビール買おっと」
真希さんが売り子さんを呼び止める。
すると、視線の先で、通路へ出ていく森さんの背中を捉えた。
手にはハンカチが握られている。お手洗いに行くのだろうか。
ここから向かうには、酔っ払いでごった返すコンコースを抜けなければならない。
さっき、いかにもナンパしそうな男たちの集団を入り口で見かけたばかりだ。
あんなに目立つ彼女が、一人で歩いていたら――。
気づいたら、腰を上げていた。
「あれ? どっか行くの?」
ビールを手にした真希さんに、「すぐ戻ります」とだけ告げて、席を飛び出した。



