ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの初恋が熱を持った。不器用に重なり合うふたりの想いが、やがてひとつの約束へとたどり着くまでの甘い軌跡。~

 ◇

 クローズ作業まで終わり、「お疲れさまでーす……」と力なく言いながら、店長と柳くんがいるバックヤードに入った。

 スマホをいじっていた柳くんが顔を上げ、「……暗っ。まだ引きずってんの?」と呆れたように言う。
 私は柳くんの言葉には曖昧に笑い返し、デスクで作業をしている店長のそばに寄った。

「店長……今日のオーダーミス、本当にすみませんでした」
 改めて謝罪すると、店長はパッと顔を上げて、眉を下げながら笑った。
「ええ? 全然いいよ! すぐに謝って注文通りのもの出せたし、お客さんも怒ってなかったんでしょ? 美絵ちゃんはいつも頑張ってくれてるんだし、そのくらい気にしないでね」
「……はい、ありがとうございます」

 ホッと息を吐いてロッカーの前に立ち、自分のスマホを取り出す。
 画面を見ると、祥ちゃんからメッセージが届いていた。

『バイトの後、少し話せる?』

 忘れていたわけではないけれど、仕事中はあえて頭の隅に追いやっていた昼間のカフェテリアの記憶が、鮮明に蘇ってくる。

(怒ってるかな……それとも、呆れられてるかな)

 重い気持ちを引きずりながら、制服から私服へと着替えを終えた。

 更衣室を出ると、私の顔を見た店長がポンと手を打って、明るい声を上げた。
「そうだっ! 美絵ちゃんも柳くんも、最近ハタチになったのよね? どう? この後、仕事後の一杯、付き合ってくれないかな! 奢るから!」

「えっ?」
 店長から個人的に飲みに誘われるなんて思ってもいなくて、私は目を丸くした。

「まあ、俺はいいですよ。腹減ったし」
 柳くんはスマホをポケットに突っ込みながら、あっさりと快諾する。

 私は、祥ちゃんからのメッセージのことも、すごく気になっていた。
 でも、正直……今の状態で彼と話をして、あの時みたいなネガティブな感情をぶつけてしまうのが怖かった。

 せっかくの珍しいお誘いだし……。
 それに少しだけ、現実から逃げたかったのかもしれない。

「……私も、行きます!」

 私は、スマホの画面をそっと伏せて、店長の誘いに頷いた。