誕生日の美絵は、終始ずっと可愛かった。
何度も思うことだが、美絵の二十歳を隣で祝える相手が自分だなんて、中学生の自分が知ったら、文字通りひっくり返って驚くに違いない。
彼女と一緒にいられる幸せを改めて噛み締め、これからも大切にしていこうと胸に刻む。
美絵にも伝えた通り、俺は教師の道に進むことを決めた。
彼女を大切に守っていけるよう、一人の男として自立するために、ここからしっかり頑張っていこうと決意を新たにしていた。
◇
今日はキャンパスに来ている。
美絵の授業が終わるのを待って、お互いバイトに向かうまでの隙間時間を一緒に過ごす予定だ。
『カフェテリアにいるよ』
空いている丸テーブルの席につき、美絵にメッセージを送った。
教職課程の課題を進めようとノートに向かっていると、ふいに「お疲れっ」と頭上から声をかけられた。
見上げると、今年から同じクラスになった志乃《しの》だった。
「おお。お疲れ」
彼女とは先日、クラスの親睦会でたまたま隣の席になり、そこで初めて話した。
彼女も教師を目指しているのだが、「自分が一般企業に勤める経験もないまま、社会に出ていく子供たちを正しく導くことができるのか?」という懸念を抱いているらしく、卒業してすぐ教師になるか、まずは企業で社会経験を積んでからにするかで迷っていると話していた。
僕が気づいていなかったような深いところまで考えていることに感心した。
それ以降、キャンパスで会った時などに少し情報交換をする仲になっている。
志乃が「ここいい?」と隣の席に座った。
「あの授業の課題、こうらしいね」「そうなんだ」などの軽い情報交換をする。
彼女は性格がさっぱりしていて、男友達と話しているように気楽でいられる雰囲気の子だ。
ふと視線を上げたら、入り口から美絵が歩いてくるのが見えた。
美絵の姿を見つけると、いつも反射的に顔が明るく綻んでしまうのを自分でも自覚している。
だが、近づいてくる彼女の顔は少し曇っていた。
(……女子と一緒にいるからか? あとで、ただのクラスメイトだとちゃんと説明しておこう……)
志乃も、テーブルのすぐ近くまでたどり着いた美絵の存在に気づいた。
「あ、彼女さん……だよね? こんにちは!」
美絵が控えめに微笑んで「こんにちは」と小さく会釈を返すと、志乃はすぐに立ち上がった。
「それじゃあ、私行くね」
僕たちの邪魔をしないようにと気遣ったのか、足早にその場を立ち去ろうとする。
その時、テーブルの上に志乃のテキストが置きっぱなしになっているのに気がついた。
「あ、志乃。忘れてる」
俺がテキストを差し出すと、「あー危ない! ありがとう」と彼女は笑って受け取り、「またね」とひらひらと手を振って去っていった。
何度も思うことだが、美絵の二十歳を隣で祝える相手が自分だなんて、中学生の自分が知ったら、文字通りひっくり返って驚くに違いない。
彼女と一緒にいられる幸せを改めて噛み締め、これからも大切にしていこうと胸に刻む。
美絵にも伝えた通り、俺は教師の道に進むことを決めた。
彼女を大切に守っていけるよう、一人の男として自立するために、ここからしっかり頑張っていこうと決意を新たにしていた。
◇
今日はキャンパスに来ている。
美絵の授業が終わるのを待って、お互いバイトに向かうまでの隙間時間を一緒に過ごす予定だ。
『カフェテリアにいるよ』
空いている丸テーブルの席につき、美絵にメッセージを送った。
教職課程の課題を進めようとノートに向かっていると、ふいに「お疲れっ」と頭上から声をかけられた。
見上げると、今年から同じクラスになった志乃《しの》だった。
「おお。お疲れ」
彼女とは先日、クラスの親睦会でたまたま隣の席になり、そこで初めて話した。
彼女も教師を目指しているのだが、「自分が一般企業に勤める経験もないまま、社会に出ていく子供たちを正しく導くことができるのか?」という懸念を抱いているらしく、卒業してすぐ教師になるか、まずは企業で社会経験を積んでからにするかで迷っていると話していた。
僕が気づいていなかったような深いところまで考えていることに感心した。
それ以降、キャンパスで会った時などに少し情報交換をする仲になっている。
志乃が「ここいい?」と隣の席に座った。
「あの授業の課題、こうらしいね」「そうなんだ」などの軽い情報交換をする。
彼女は性格がさっぱりしていて、男友達と話しているように気楽でいられる雰囲気の子だ。
ふと視線を上げたら、入り口から美絵が歩いてくるのが見えた。
美絵の姿を見つけると、いつも反射的に顔が明るく綻んでしまうのを自分でも自覚している。
だが、近づいてくる彼女の顔は少し曇っていた。
(……女子と一緒にいるからか? あとで、ただのクラスメイトだとちゃんと説明しておこう……)
志乃も、テーブルのすぐ近くまでたどり着いた美絵の存在に気づいた。
「あ、彼女さん……だよね? こんにちは!」
美絵が控えめに微笑んで「こんにちは」と小さく会釈を返すと、志乃はすぐに立ち上がった。
「それじゃあ、私行くね」
僕たちの邪魔をしないようにと気遣ったのか、足早にその場を立ち去ろうとする。
その時、テーブルの上に志乃のテキストが置きっぱなしになっているのに気がついた。
「あ、志乃。忘れてる」
俺がテキストを差し出すと、「あー危ない! ありがとう」と彼女は笑って受け取り、「またね」とひらひらと手を振って去っていった。


